DETARAME SOUNDS

NO MUSIC NO LIFEな一般男性による音楽レビューブログ

THE MAD CAPSULE MARKET'S / 『HUMANITY』(1990)全曲レビュー

 

HUMANITY

HUMANITY

 

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左からKYONO、紅麗死異剛市、MOTOKATSU、室姫深



1985年に結成されたミクスチャー・ロック・バンドの1stアルバム。

 

メンバー:
KYONO (Vo)
紅麗死異剛市 (Ba / Cho)
室姫深 (Gt)
MOTOKATSU (Dr)

 

1stシングル『GOVERNMENT WALL』に続いてリリースされた1stアルバム。 

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もともとインディーズのINSECT NOISEというレーベルでリリースされた本作は、1996年にビクターを通して再販されているが、その際に一部の楽曲において歌詞が規制されている(実際に該当部分のボーカルが消されている)。

 

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1.「 三秒間の自殺」 ★★★★★

ブリブリなベースが牽引する高速で忙しないパンク。サビでKYONOと絡む剛士のコーラスがどこか狂気的で心地よい。歌詞はタイトルに見合ったストレートにダークな内容で、岡田有希子について歌われているという説もある。次作『P・O・P』にて再録されている。ライヴでは1995年頃まで演奏されていた。

2. 「あやつり人形」 ★★★★★

こちらもベースが牽引する感じだが、テンポ的にこちらの方がグルーヴ感が前面に出ていて気持ちいい。初期の彼らに多い社会批判的な歌詞だが、そのテーマを非常にポップでキャッチーなサビでも歌っているのが面白い。こちらも『P・O・P』にて再録されている(厳密に言うとメジャーデビューシングルのタイミングでの再録)。1993年頃までライヴで演奏されていた。

3. 「LIFE GAME」 ★★★★☆

どこかシュールで陽気な跳ねるリズムの1曲。サビにおける剛士のコーラスが耳に残る(再発盤では規制により削除されている)。こちらも『P・O・P』にて再録されていて、個人的には少し速くなっている再録版のテンポの方が好み。1994年頃までライヴで演奏されていた。

4. 「ギラギラ」 ★★★★★

このバンドの曲の中でもかなり異色な、ド直球下ネタソング。ギターの軽快なカッティングが絶品。こちらはメジャーデビューシングルの一つ『カラクリの底』のカップリングとして再録されている。1994年頃までライヴで演奏されていた。

5. 「讃美歌」 ★★★★☆

ズンズンと進むリズムが癖になる曲。若さも感じる社会風刺的な歌詞がキャッチーな形で歌われている。バッキング・ヴォーカルがライヴ映えしそうで良い。以前ネット上にアップされていたライヴ映像では問題なかったが、メンバーがまだ若いためか音源だと少々迫力にかける歌唱になっている。1995年頃までライヴで演奏されていた。

6. 「HUMANITY」 ★★★★★

哀愁が感じられるメロディアスなアルバム表題曲。特に剛士のバッキング・ヴォーカルがより切なさを増幅させている。初期〜中期のMADを代表する名曲で、ライヴの定番曲。後にシングル『WALK! (JAPAN MIX)』にて再録された。ライヴでは1996年まで演奏されていた。

7. 「カンヅメの中」 ★★★★☆

ベースの主張が激しく、どこかシュールな雰囲気もある不思議なノリの曲。1995年頃までライヴで演奏されていたが、当時のバンドの音楽性に合わせてアレンジが変更されていたかどうかは不明。

8. 「どうしようもない人の唄」 ★★★★★

ポップで跳ねるノリが、特に剛士のベースと室姫深のギターの絡み方が耳に残る。後にシングル「あやつり人形」のカップリング曲として再録されていて、そちらの方がよりかっこよくなっている。1994年頃までライヴで演奏されていた。

9. 「Dear 歩行者天国の皆様」 ★★★☆☆

初期のMADのアルバムで一つの定番となる紅麗死異剛市ボーカルの曲。病的な声質に反抗的な歌詞が、怖いまでにポップで優しいピアノの音の上に乗っている狂気的な曲。

10.「 ラ・ラ・ラ(僕がウソつきになった日)」 ★★★★★

ハイテンションで爆走するハードコア。こちらもベースが曲を牽引するようなパワフルさを持っている。何度か再録されているが、個人的にはダントツで1996年リリースのセルフカバー盤『THE MAD CAPSULE MARKET'S』に収録されているバージョンがカッコイイと思う。1996年までは定番曲で、その後は1998年に出演したイベント・ライブで1回演奏されたのみ。

11. 「だんだん」 ★★★★★

こちらも初期の定番曲。速いテンポではあるが、ハードコア感よりキャッチーさがまだ勝っているという絶妙なバランスになっている。後半の紅麗死異剛市とKYONOのツインボーカルが妙に切なさを煽ってくる名曲。1995年頃までライヴで演奏されていた。

12. 「20秒」 ★★★★★

隠しトラック。タイトルの通り、20秒しかない短い曲。反抗的な歌詞、ポップでキャッチーなメロディ、シンプルな構成:初期MADの特徴が詰め込まれている。こちらは初期のライブでのアンコールの定番で、ステージに戻ってきたと思ったら20秒だけ演奏してまたはけるという光景がよく見られた。1994年の『MIX-ISM』リリースツアーまでは演奏されていた(ライヴVHS『reading S.S.M』にも収録されている)。

 

総評: ★★★★☆

お気に入り曲:「三秒間の自殺」「あやつり人形」「ギラギラ」「賛美歌」「HUMANITY」「どうしようもない人の唄」「ラ・ラ・ラ(僕がウソつきになった日)」「だんだん」「20秒」

 

後の成熟した音楽性と比較するとやはりまだ未熟感があるのは否めないが、この時点でただのパンクバンドとは一線を画するオリジナリティと不思議なキャッチーさが光っている。本作について、メンバーは1994年に『PARK』をリリースするまでは本作を超えることができていないという感覚が常にあったと語っている。そう考えると、後のアルバムの完成度の高い音楽性の土台となっているのは間違いなく本作のようなスタイルであり、作った本人たちだからこそそういった苦悩が生まれるのも納得がいく。それくらい本作はインディーズのデビュー作としては異常なまでに"完成"している。

 

*配信されているバージョンは再発盤が元となっているため、一部ボーカルが修正されている。また、隠しトラックの「20秒」は配信されていない。

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