DETARAME SOUNDS

NO MUSIC NO LIFEな一般男性による音楽レビューブログ

A Ghost of Flare / 『鼓動』(2013)全曲レビュー

 

鼓動

鼓動

 

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左からTaichi、Yu-taro、要、田浦楽、Tsukko

2009年に結成されたされたメタルコア・バンドの1st EP。

 

メンバー:
Yu-taro (Gt)
要 (Vo)
Taichi (Ba)
Tsukko (Gt)
田浦楽 (Dr) ※サポート

 

個人的に日本のメタルコア・デスコアシーンが一番盛り上がっていたと思う時期の末期である2013年にリリースされた本作は、戦争をテーマとしたコンセプト・ミニ・アルバム。

コンセプトについてはこちらのインタビューでメンバーが語っている:https://garimpeirorecords.wixsite.com/garimpeirorecords/agofinterviewmar2013

 

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1.  Prologue

ストリングスに英語の語りが入るドラマチックなイントロ。アルバムのドラマ性という意味では非常にいい効果を発揮しているが、わざわざ単体で聴こうとは思わない。

2. Under the Control of the Black ★★★★★

要のタイトルコールから始まる入りがかっこいい。登場するリフもどれもドストレートなメタルコア的なものでシンプルにノりやすい。ブレイクダウンにストリングスが入っていたり、たまにクリーントーンのギターフレーズが入ってきたりするあたりにこのバンドの哀愁表現の上手さが感じられる。

3. Rain Named Desire ★★★★★

イントロから要のスクリームと田浦学のブラストビートで爆走する。全体的に勢いに満ちていて、疾走感がたまらない。ブレイクダウンにデスコアっぽさも少し感じる。ブレイクダウン後にまた疾走するのが展開としてベタだが文句なしにかっこいい。ドラムのフィルがテクニカル。現在はCrystal Lakeのサポートで有名な田浦学はこの頃からバケモノだったことが解る。アウトロのブレイクダウンも強烈。

4. Cocktail ★★★★☆

英語の語りを経てリフがスタート。全体的にリフに正統派メタル要素を感じるのは気のせいだろうか。途中にストリングスに加えシンセっぽい音が聴こえる。ブレイクダウン時にはバッキングボーカルの掛け声が入る。ライヴではコール・アンド・レスポンスが起きるのが想像できる。要所要所に入る壮大さを感じるフレーズが個人的には彼らの個性の一つだと思う。アウトロでの疾走がまたかっこいい。

5. Number Six ★★★★★

冒頭からザ・メタルコア的な刻みリフでヘッドバンギングを誘う。爆走はせず、ミッド寄りのテンポでヘヴィに進んでいく曲。開けた空気感のパートも入っているが、基本的にはブレイクダウン重視の展開。ただ、情緒的なギターのバックに電子音が入っていたり、ヘヴィ一辺倒ではないのが面白い。

6. Silence and Then... ★★★★★

ピアノの旋律が美しく、同時に儚さや切なさを感じさせるSE的な曲。途中から女性コーラスや電子音が加わり、次の曲へとつながる。

7. 鼓動 ★★★★★

このバンドを語る上で絶対に外せない不動の名曲。イントロのコードと哀愁を感じるクリーントーンのギターの組み合わせが最高にかっこいい。そこから疾走パートへ。こちらのリフもかなり正統派メタルっぽさを感じる。サビの歌詞が日本語なのがこの手の国内バンドとしては珍しい。要のヴォーカルは特にこの日本語部分に合っている気がする。ブレイクダウンの後半にコール・アンド・レスポンスが入り、そのまま疾走パートに戻る展開がいい。短いが、ギター・ソロも入っている。一旦ゆったりしたテンポになり、クリーンのアルペジオで雰囲気を創り上げたのち、アウトロにてエモーショナルなギターとボーカルが感情を爆発させる。最後の最後に来る要の"この鼓動が"のシャウトが胸を締め付ける。

 

総評: ★★★★☆

お気に入り曲:「Under the Control of the Black」、「Rain Named Desire」、「鼓動」

 

どうしてもメタルコアポスト・ハードコア、デスコアなどの所謂"ラウド系"の界隈はマンネリ化しやすいサウンドを奏でているため、なかなかオリジナリティを持ったバンドが登場しにくい。A Ghost of Flareもそこまで革命的な音を出しているわけではない。ただ、この作品が2013年にリリースされたことを考慮すると、非V系のバンドがラウドな音に日本語詞を載せているのはまだまだ珍しいことだった(今でもまだ珍しい方)。また、個人的な印象としてはCrystal LakeにRyoが加入して以降は数々のバンドのヴォーカリストが彼に似た声を出そうとしだしたように思う。それ自体は悪いことだとは言わないが、本作で聴ける要のヴォーカルは一発で彼だとわかるようなシャウトとなっているのもキーポイントだと思う。それにしても、以前ツイッターで"「鼓動」というタイトルの曲はどれも名曲"という趣旨の投稿を見たことがあるが、実際にそうだと思う(BUCK-TICKDIR EN GREY然り)。

 

個人的には2013年に友人のバンドのライヴに行った際に対バンでAGOFを観ている。その時ににかっこいいと思い本作を購入したが、当時はまだメタルコア系のサウンドに惚れ込んでいなかったため、しばらく経ってからは聴かなくなっていた。6年後、昨年末にMAKE MY DAYの主催公演を観た際にAGOFも出演していた。メンバーはYu-taro以外全員変わっていたが、非常にかっこよかったのと、セットリストに本作収録曲の「Rain Named Desire」が入っていたことから改めて『鼓動』を聴き直したところ、惚れ直した。というのが今回のレビューを書こうと思ったきっかけ。

 

Kodou

Kodou

  • A Ghost Of Flare
  • メタル
  • ¥1222