ROACH / 『scarlet』（2007）全曲レビュー
2003年に沖縄で結成されたロック・バンドの1stシングル。
1stアルバム『MIND OF THE SUN』から約半年後にリリースされた。
同作のレビューはこちら：
この後、次のリリースまで年単位の期間が空くが、その間にまさし(Gt)とMISAKI(Dr)が脱退したため、彼らが参加する最後の音源でもある。アルバム同様、本作はサブスク解禁されていないが、itunesでは販売されている。
メンバー：
たぁま♫ (Vo) ※現在の表記は"taama"
くぼっち (Gt)
まさし (Gt)
勝也 (Ba)
MISAKI (Dr)
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1. scarlet ★★★★★
このバンドのキャリア全体を見てみるとあまりに異質なポップ・ソング。もちろんロックではあるんだが、あろうことか"かわいい"とすら思えてしまうメロディーが癖になる。このバンドならではの琉球的雰囲気は当然活かされているし、シンプルに切ない名曲。ただ、バンドとしてはこの曲は今となっては恥ずかしいみたいで、15周年ライヴでも観客から野次で"「scarlet」演って"という趣旨のことを言われた際も"その曲だけは絶対イヤだ（笑）"というニュアンスの返事をしていた。確かに仮に今の彼らが演ろうと思ってもセットリストに入れづらいというのは容易に想像できる。↓MVに映るメンバーも初々しい（笑）
2. ひまわり ★★★★☆
イントロは一瞬グランジ的な雰囲気があるが、ツインギターになった瞬間にポップ色が強まる歌ものロック。ギターは全体的にコード弾きとディレイの効いたアルペジオがメインという、90年代V系に通ずる部分もあるスタイル。サビのメロディーが特にいい。意外とスッと終わる。
3. 理由 -kotowari- ★★★★★
タムを中心に展開していくドラムのリズムが全体的にかっこいい曲。ここで初めてギターリフと呼べるようなフレーズが登場する。とはいえ、こちらも歌ものロックで決して激しくはない。強く歌い上げるサビが非常にいい。アウトロが軽いブレイクダウンっぽいフレーズになっているのが面白い。
4. now I know ★★★☆☆（音源）★★★★★（ライヴ）
スラッシュ・メタルとメタルコアの中間を行くようなアップテンポでヘヴィな曲。ボーカルはたぁま♫と勝也が交互にグロウルするパートと、たぁま♫がクリーンで歌い上げるサビが対照的。かっこいいが、全体的に安っぽさというか、"もどき"感が拭えない曲。やりたいことに演奏力が追いついていない感が否めない。ギターのリフももっと刻んだりしたら本格的だが、どこかチープだし、ドラムももっとツーバスの入れ方を工夫したほうがかっこいい。このシングルの曲で唯一数年間は定番曲だった（2011年くらいまで）。また、同じくこのシングルの曲で唯一15周年ライヴで披露された。ライヴで聴いた感じはかっこよかったので、今の技量で再・アレンジしたうえで再録してほしい。
総評： ★★★★☆
お気に入り曲：「scarlet」、「理由 -kotowari-」、「now I know」（ポテンシャル的な意味も含めて）
この半年前にリリースされたアルバム『MIND OF THE SUN』と比べるとかなりポップなサウンドが目立っているのが印象的。ヘヴィと言える曲が1曲のみで、メタルコア寄りではないスタイルだということを考えると、彼らなりに方向性を模索していた時期なのだと思う。2008年に入ると実質的に彼らは沖縄内にとどまるようになり、そのまま年末にまさしとMISAKIが脱退する。ギターはこれ以降ずっと1人体制となり、ドラムの後任にはDaisukeが加入する。同時期にMUCCきっかけで契約していた事務所を離れ、自分たちでまた1から再スタートを切る決断をする。その後2010年にシングル、翌年にアルバムを出すが、その頃には今のROACHの音楽性の土台は出来上がっている。そう考えるとこのシングルを出した後の沈黙期間も彼らにとって必要だったのだと思う。
