DETARAME SOUNDS

NO MUSIC NO LIFEな一般男性による音楽レビューブログ

Bring Me The Horizon / 『This Is What The Edge of Your Seat Was Made For』(2004)全曲レビュー

 

This Is What Edge of Your Seat Was Made for

This Is What Edge of Your Seat Was Made for

 

f:id:detaramesounds:20200415155913j:plain

左からLee Malia、Matt Nicholls、Matt Kean、Oliver Sykes、Curtis Ward

2004年にイギリスのシェフィールドで結成されたロック・バンドの1st EP。メタルコアにポップスやオルタナ要素を取り入れた音楽性を武器とし、今やロックすら超越した実験的なサウンドで若者に絶大な人気を誇るようになった彼らだが、出自はゴリゴリのデスコア。本作はバンドの初の正式リリースで、今の彼らからは想像もできない若々しいアグレッシブなデスコアを聴くことができる。

 

メンバー:
Oliver Sykes (Vo)
Lee Malia (Gt)
Curtis Ward (Gt)
Matt Kean (Ba)
Matt Nicholls (Dr)

 

デスコア時代のBMTHといえば次作(2006年リリースの1stアルバム『Count Your Blessings』)が注目されがちで、本作の存在感は正直かなり地味だ。バンドもライヴでまれに初期の曲を演るときは本作ではなく次作以降の曲をチョイスするため、新規ファンにとっても触れる機会が少ない作品だと思う。

 

______________________________________________________________

 

1. RE: They Have No Reflections ★★★☆☆

冒頭からハーモニクスが効いたリフと、おそらくタッピングで弾いている不思議なリフがまず耳に残る。Oliverのスクリームも強烈だが、集中して聴くとなぜ彼が後に喉を潰したのかが解るくらい明らかに"喉に悪い"タイプの叫び方をしている。全体的に構成が複雑寄りで、テンポもコロコロ変わる。このジャンルのスタンダード的な楽曲構成の型にはまっていないのは評価できるが、いまいち各セクションがスムーズにつながっていない印象を受けるというか、強引にくっつけたように感じる部分がある。展開が多い割には明確なクライマックスがあるわけでもないので、正直長く感じる。随所で登場するリフはまだ素人っぽさがありつつもかっこいいので、彼らの才能自体はすでに垣間見える。2018年のツアーで披露された初期曲メドレーにはこの曲のアウトロ部分が含まれている。

2. Who Wants Flowers When You're Dead? Nobody. ★★★☆☆

唐突に始まる感じがと、その後一瞬登場する単音的なリフがかっこいい。その後は前の曲同様にせわしなく展開が変わっていく。感想は正直Tr.1とあまり変わらない。かっこいいと思うフレーズやセクションはあるが、すぐに別のものに変わってしまうため浸れないのが残念。後半の疾走パートは文句なしにかっこいい。

3. Rawwwr! ★★★★☆

疾走感があるイントロが抜群の破壊力。前2曲と比べたら曲の展開がそこまで強引に感じないのと、ギャングコーラスが登場する点でノリやすい。歌詞面では"If you think you're alive, then you're better off dead"という2009年リリースの2ndアルバム『Suicide Season』収録曲の「Diamonds Aren't Forever」に登場するフレーズがこの曲ですでに使用されているのが興味深い。フェードアウトで終わるのが地味にこういうジャンルでは珍しい気がする。

4. Traitors Never Play Hangman ★★★★☆

冒頭からEPのタイトルをシャウトするので、実質的なタイトル曲的な存在だと言える曲。Tr.1~2と比較するとこちらも展開がそこまでせわしなくないので、曲の唐突な展開に置いていかれそうになることもない。ブレイクダウンのフレーズの粒が微妙に揃ってなかったり、若さゆえの荒々しさを感じる部分はやはりあるが、本作の中では一番作曲面で洗練されていると思う。アウトロでOliverのシャウトが残るが、改めて喉に悪い叫び方だと実感する。

 

 

総評: ★★★☆☆

お気に入り曲:「Rawwwr!」、「Traitors Never Play Hangman」

 

世界的な人気を誇るモンスターバンドとなった今の彼らからは考えられないようなヘヴィな音楽性のEPだ。おそらく今の彼らのファンの中には2013年リリースの名盤4thアルバム『Sempiternal』以前の作品を聴いたことがない、もしくは存在を知らない人も少なくはないかもしれない。特に日本では携帯のCMソングに採用されたこともあって、彼らのキャリアや歩みを知らないライトなファンも増えているはず。また、メタルコアまでは受け入れられてもデスコアサウンドが苦手な層もかなり多いと思う。逆にデスコア時代が好きな人の大半はもう離れている可能性が高いため、現在のファン層でこの時代のBMTHに精通している人はマイノリティだと言っても過言ではないだろう。そんな層にわざわざ本作を聴くことをすすめるかと言ったら否だ。まだ1stはデスコアとして高レベルな楽曲が入っている上に「Pray For Plagues」の知名度が多少あるからすすめることもあり得るが、本作はまだまだ発展途上なサウンドが展開されていて、全体的にまだアマチュア感が拭えきれてない。故にBMTHのディスコグラフィを網羅したいという熱狂的なファンや、よっぽどデスコアが好きな層以外にとっては重要度が低いと思う。デスコア時代の本領発揮は次作(同時に次作がデスコア期の最後の作品でもあるが)。

 

日本では残念ながら未配信。サブスクにはないが、同じデスコア期でも1stはitunesで販売されている。