DETARAME SOUNDS

NO MUSIC NO LIFEな一般男性による音楽レビューブログ

DEATH FILE / 『Hang Myself』(1997)全曲レビュー

 

HANG MYSELF

HANG MYSELF

  • アーティスト:DEATH FILE
  • 発売日: 1997/04/05
  • メディア: CD
 

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1992年に千葉県柏市で結成されたデスメタルバンドの唯一のアルバム。後にUNITEDにヴォーカリストとして加入する湯浅正俊と、後にSURVIVEを結成する根本勝(NEMO)が所属していたことでマニアに知られている。知名度こそ無いが、ハードコア/グラインドコアやジャズなどの影響も感じられるサウンドで、王道なデスメタル的スタイルからは逸脱している面白い1枚。

 

メンバー:
Masatoshi Yuasa (Ba/Vo)
Masaru Nemoto (Gt)
Ryousuke Ichikawa (Gt)
Ryu Takeda (Dr)

 

同じく千葉出身のヌンチャクやSWITCH STYLEとともに"KxCxHxC"(柏シティー・ハードコア)というシーンに属していて、90年代後半まで同シーンを盛り上げていた。残念ながらバンドは1998年に解散してしまうが、結果的に解散したことによって"UNITEDのヴォーカリストとしての湯浅正俊"と"SURVIVEの結成"が実現したので、悪いことばかりではない。

 

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1. WASTE? ★★★★★

ずっしりしたドゥーミーなリフを経て、爆走。ギターの音作りや湯浅氏の強烈なグロウルが曲の"メタル感"を成立させているが、曲のテンション(特に早いパートにおいて)はハードコアに非常に近い。爆走したり、ミッドテンポになったりととにかくリズムの変化が多い。中間地点あたりで登場する刻みリフが非常にかっこいい。後半はハードコア色が強まっていて、刻みよりもコード弾きで疾走感を出している。アウトロはイントロ同様にドゥーミーにどんどんテンポを落としていく。まさにジェットコースターのようなテンポチェンジの嵐。

2. MENTAL ★★★★☆

ブラストビートで爆走するパートと、パンク的なテンポで疾走するパートで主に構成されている短い曲。とにかく早い。こちらもこまめにリズムが変わるので、ブラスト多めでも飽きない。

3. INDEFFERENT ★★★★★

いきなりのブラストでびっくりするが(笑)、そこから登場するリフが非常にかっこいい。基本的に早いグラインドコア的テンポ感とパンク的テンポ感の境界線を行き来しているような感覚。随所で登場するスラッシーなザクザクしたリフ達が疾走感を増幅させている。アウトロはヒステリックなスクリームが徐々にフェードアウトするものとなっている。

4. CONFUSED ★★★★★

ブラストと同時に登場するどこかパンキッシュなリフが良い。他の曲と比べて展開がそこまで多くないこともあり、割とストレートにノリやすい(あくまでもこのバンドにしてはだが)。こちらも短めの曲であっという間に終わる。

5. RAIN ★★★☆☆ 

アルバムの中で一番長い、スローテンポなヘヴィネスを叩きつけてくる曲。展開の数も少なく、中盤でやっと大きな変化があるが、基本的な軸となるリフやテンポはほぼ変わらない。展開が少ない割に曲は長めなので、少々ダレる感覚はある。個人的にはあと1、2分短ければ好み。

6. JUST LOVE YOUR OWN LIFE ★★★★★

ひたすらハイテンションで爆走するカオティック・ハードコアとも言える短い曲。湯浅氏のボーカルに対して合いの手的に絡むバッキング・ボーカル(おそらく根本氏の?)が地味にいい味を出している。こちらも短い時間の中でどんどん展開が変わっていく。

7. OPINION ★★★★★

前の曲から流れ込むようにスネアのカウントが入って爆走するさらに短い曲。こちらはスラッシーなギターが目立つ。同じリフを保ちつつ、ドラムが大胆に緩急をつけているのが面白い。

8. JEALOUSY ★★★★★

いきなりジャズとしか形容できない落ち着いたフレーズのイントロから、そのフレーズをメタル的なものに変化させて爆走。その後はデスとジャズが交互に展開されていくが、この静と動とも言える対比が非常にかっこいい。メタル重視の後半に登場するヘヴィなリフも良い。

9. THE BOY WAS THINKING ★★★★★

MACHINE HEADあたりのバンドを彷彿とさせるミッドテンポのイントロを経てパンキッシュに疾走。ギターのリフがどんどん変化していくのがシンプルにかっこいい。曲の展開がコロコロ変わっていく手法が一番成功しているのは個人的にこの曲だと思う。

10. RIGHT THING ★★★★★

ミッドテンポ寄りなリフを経て、スラッシュとハードコアの中間とでも言うべき絶妙なテンポで疾走する。ギターも本作で一番王道に近いようなフレージングをしていて、それが逆に収録曲の中でこの曲を際立たせている。どんどん加速していくアウトロが破壊力抜群。

11. UNTITLED ★★★★☆

本作で一番短い曲で、一番ハードコア色が強い。演奏もアウトロ以外はメタル色薄め(音作りはヘヴィなままだが)。ただ単に爆走し、後半では狂人の如くメンバーが奇声をあげながらスラッシーなリフで加速し、あっという間にスッと終わる。

 

総評: ★★★★☆

お気に入り曲:「INDEFFERENT」、「JEALOUSY」、「THE BOY WAS THINKING」

 

個人的にはUNITEDが大好きで、彼らの歴代のヴォーカリストの中でも湯浅氏の声が一番好みだ。その流れでDEATH FILEとこのアルバムに興味を持ち、入手するに至った。やはり、"獣の声を持つ男"と称された彼の声の迫力は凄まじく、一発で誰だかわかるような質感がある。本作はその声に、若さあふれる荒々しいサウンドがこれでもかと堪能できる一枚だ。日本からここまでハードコア系とデスメタル系のサウンドをかけ合わせたバンドが当時存在したというのが面白い(もちろん日本のデスメタルは専門外なので、他にも存在はしていたと思われる)。とにかく早い曲たちがシンプルにかっこいいので、デス系のサウンドが好きな人には絶対オススメ。正直もっと知られていいアルバムだと思う。